不動産エコ診断で分かる危険な環境汚染物質
ホルムアルデヒド
ホルムアルデヒドとは
ホルムアルデヒドは、HCHOと表される最も簡単なアルデヒドで、極めて揮発性の高い有機化合物のひとつです。合板や壁紙などの接着剤、塗料などの原料として使われることが多い化学物質です。
ホルムアルデヒドと健康被害
ホルムアルデヒドを一定期間曝露すると、のどの痛みや頭痛などのさまざまな身体異常が起こる「シックハウス症候群」に罹患するおそれがあります。
シックハウス症候群は、大人と子供ではその症状が異なるとされています(下図参照)。
ホルムアルデヒドと不動産の関連
ホルムアルデヒドが壁紙やフローリングなどの住宅建材として多量に使用されていた場合、シックハウス症候群の発症が懸念されます。
なお、近年の住宅に使われる塗料製品の多くに「F☆☆☆☆(エフフォースター)」表示があります。Fはホルムアルデヒド(Formaldehyd)の頭文字で、☆が多いほどホルムアルデヒドが少ないという安全性基準のひとつですが、過信してはいけません。
なぜなら、下表のとおり、F☆☆☆☆は、ホルムアルデヒドがゼロを意味するものではなく、「5μg/㎡h以下」なのです。
また、厚生労働省はシックハウス症候群の原因物質として13物質を定めていますが、ホルムアルデヒドはそのひとつに過ぎないのです。つまり、他の12物質を使用していても、ホルムアルデヒドさえ少なければF☆☆☆☆表示が可能なのです。
したがって、「F☆☆☆☆建材を使っている家イコール安全とは限らない」と考えるべきです。
【F☆マークと使用制限】
表示 | ホルムアルデヒドの発散速度 | 内装仕上げの制限 |
F☆☆☆☆ | 5μg/㎡h以下 | 制限なし |
F☆☆☆ | 5μg/㎡h超20μg/㎡h以下 | 使用面積制限あり |
F☆☆ | 20μg/㎡h超120μg/㎡h以下 | 使用面積制限あり |
無等級 | 120μg/㎡h超 | 使用禁止 |
不動産エコ診断の診断内容
一部屋で過ごす時間は、寝ている時間が最も長くなります。したがって、寝室として使われるであろう部屋(推定寝室)にホルムアルデヒドが発生していないことが最重要と考えられます。
このような考え方に基づき、不動産エコ診断では、当該部屋(推定寝室)においてホルムアルデヒドの有無を計測し、安全性を確認します。
TVOC
TVOCとは
TVOCとは、総揮発性有機化合物(Total Volatile Organic Compounds)のことです。
これは、特定の揮発性有機化合物(VOC)を指すのではなく、複数のVOCの混合物の濃度レベルを意味しています。
厚生労働省が指針値を定めている揮発性有機化合物は下表のとおり13種類ありますが、人体に悪影響を与えるVOCは他にもたくさんあります。しかし、全てのVOCに指針値を定めるのは不可能であるため、室内の空気汚染の目安として、13物質以外の個々の濃度の総計で規制しているのです。
このように、TVOCは室内空気質の状態の目安として利用されることが期待されています。
【厚生労働省が定めた13物質】
揮発性有機化合物 | 主な用途 | 室内濃度指針値 |
ホルムアルデヒド | 壁紙用接着剤・合板 | 100μg/㎥ |
トルエン | 接着剤や塗料などの溶液 | 260μg/㎥ |
キシレン | 塗料用溶剤・接着剤 | 870μg/㎥ |
パラジクロロベンゼン | 防虫剤(衣類)・芳香剤 | 240μg/㎥ |
エチルベンゼン | 施工用接着剤・塗料用溶剤 | 3800μg/㎥ |
スチレン | 断熱材、畳心材 | 220μg/㎥ |
クロルピリホス | 白あり駆除剤 | 1μg/㎥ |
フタル酸ジ-n-ブチル | 可塑剤(塗料、接着剤) | 220μg/㎥ |
テトラデカン | 塗料等の溶剤・灯油 | 330μg/㎥ |
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | 可塑剤(壁紙、床材) | 120μg/㎥ |
ダイアジノン | 農薬・殺虫剤 | 0.29μg/㎥ |
アセトアルデヒド | 合板等の合成樹脂・接着剤 | 48μg/㎥ |
フェノルカルブ | 白あり駆除剤 | 33μg/㎥ |
TVOCと不動産の関連
居住環境の室内空気からは、約900種類の化学物質が確認されています。これらの化学物質は、建築材料のみならず、家具や生活用品等様々なものが排出源となっています。
室内空気汚染は、特定の化学物質に高濃度曝露する労働環境とは異なり、多数の低濃度の化学物質に複合曝露するすることに特徴があるため、懸念される特定の化学物質に注意を払うことのみならず、化学物質の総量を抑制する取り組みが必要とされているのです。それゆえ、個別のVOC指針値とは独立に扱われなければならないとされています。
不動産エコ診断の診断内容
前記ホルムアルデヒド同様、不動産エコ診断では、最も長く過ごすであろう部屋(推定寝室)においてTVOCを計測し、安全性を確認します。
放射線
放射線とは
放射性物質(放射能)は、放射線を出さない安定した物質に変化するまで何度かの崩壊をくりかえしますが、このとき放出される粒子や電磁波を放射線といいます。
放射線にはα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線などの種類があります。
α線とβ線は透過力が低いため、紙やアルミニウムなどの日常にあるものでも遮蔽することができます。一方、γ線は透過力が強いため、コンクリートで遮蔽しようとしても50cm程度の厚みを要します。
放射線と健康被害
いずれの放射線であっても、人が被曝すると人体の細胞組織や遺伝子を破壊するなどの有害性があります。放射線が人体に到達あるいは体内を通過すると、体内のDNAを切断するなどし、脱毛、皮膚のはがれ、臓器不全、がん、白血病等の深刻な病気を引き起こしたり、遺伝子障害や染色体異常など、間接的な胎児への影響も懸念されるのです。
なお、0~9歳の子供の放射線感受性(放射線の影響でいかにガンを発症しやすいか)は、甲状腺ガンで成人に比べて2~3倍、白血病で4~5倍とされるなど、胎児・乳幼児などの小さな子供ほど放射線の影響を受けやすいともいわれています。
放射線と不動産の関連
被曝には様々なルートがありますが、不動産との関係で見ると、部屋の中で汚染された空気を吸い込むこと、及び放射線量が高い場所(ホットスポット)からの被曝に注意する必要があります。ホットスポットは、風雨により放射線がたまることで生じます。
【放射線がたまりやすい場所】
①雨どい ②縦どい ③水たまり跡 ④マンホール ⑤排水口 ⑥側溝 ⑦苔むした地表
⑧植木鉢の表面 ⑨枯葉の集積
不動産エコ診断の診断内容
不動産エコ診断では、室内において汚染された空気の浮遊がないかを計測するとともに、建物の外(敷地内)においてホットスポットがないか、計測し、安全性を確認します。
電磁波
電磁波とは
電磁波とは、空間を走る電磁気の波のことをいい、空間を光と同じ速さで伝わっていく電気エネルギーです。電場(電気の力をもつ場)が動けばそこに磁場(磁気のある場)が生まれ、磁場が動けば電場が生まれます。そして、次々と電場と磁場が相互に振動しながら空間を波のように伝わっていく、このエネルギーが電磁波の正体です。
1秒間にいくつ波がくるかを周波数と呼びます。たとえば50Hz(ヘルツ)は、1秒間に50回の波が来ることを意味しています。周波数が多いほど波長は短くなり、この周波数如何で電磁波の性質が変わってきます。なお、私達がよく耳にする「電波」とは、電磁波のうち周波数が3T(テラ)Hz以下のものをいいます。
【電磁波の種類と主な用途】
波長 | 周波数 | 種類 | 主な用途 | |
短 ↑
↓ 長 |
高 ↑
↓ 低 |
放射線 | γ(ガンマ)線 | |
X(エックス)線 | レントゲン写真 | |||
光 | 紫外線 | 殺菌灯 | ||
可視光線 | ||||
赤外線 | 赤外線ヒーター | |||
電波 | マイクロ波 | 携帯電話、電子レンジ | ||
超短波 | FMラジオ放送 | |||
短波 | 短波放送 | |||
中波 | AMラジオ放送 | |||
長波 | 海上無線 | |||
超長波 | IH調理器 | |||
超低周波 | 送電線、家庭電気製品 |
電磁波と健康被害
電磁波がもたらす問題には2面あります。ひとつは電磁波がノイズとなって他の機器の誤作動を誘発する「電磁波障害」であり、もうひとつは人体へ影響する「健康被害」です。
電磁波の人体への影響は、被曝量と被曝時間の関係で決まります。つまり、被曝時間が短くても被曝量が多ければ影響がでるでしょうし、もし被曝量が少なくても被曝時間が長ければ、やはり影響がでるのです。
人体への影響には、刺激作用(体内に誘導電流が発生することにより神経や筋を刺激する作用)、熱作用(全身や局所の体温を上昇させる発熱作用)、非熱作用(ホルモン分泌や染色体異常を誘発する作用)があります。
近年とくに問題視されているのは、浴びていると気づかないほどの弱い電磁波を慢性的に浴び続けた場合の影響についてです。これには小児白血病やガンのほか、下表のような多くの健康被害が懸念されており、「電磁波過敏症」と呼ばれています。
【電磁波によって起きるとされている症状・異常】
症例 | 超低 周波 |
マイ クロ波 |
症例 | 超低 周波 |
マイ クロ波 |
||
めまい | ○ | ○ | 自 立 神 経 系 |
頭痛、頭が重い | ○ | ○ | |
吐き気 | ○ | ○ | 疲労、倦怠感 | ○ | ○ | ||
眼 | かすみ眼 | ○ | ○ | 日中の眠気 | ○ | ○ | |
白内障 | ○ | 夜間の不眠 | ○ | ○ | |||
網膜炎症 | ○ | 志気の低下、消沈 | ○ | ○ | |||
角膜上皮炎症 | ○ | ○ | 神経衰弱、神経疲労 | ○ | ○ | ||
眼球の痛み | ○ | 食欲の衰え | ○ | ||||
涙が出る | ○ | 興奮、感情の不安定 | ○ | ||||
白いものが見えにくい | ○ | 記憶力の衰え、部分消失 | ○ | ○ | |||
青い色が見えにくい | ○ | 知的レベルの低下 | ○ | ○ | |||
閃光体験 | ○ | ○ | 指などの震え | ○ | ○ | ||
鼻 | 臭いを感じにくい | ○ | まぶたの震え | ○ | |||
筋 肉 ・ 皮 膚 |
頭、前頭部の突っ張り感 | ○ | ○ | 頭と耳のチック症 | ○ | ||
手足の硬直感 | ○ | 意識がなくなる | ○ | ||||
筋肉痛 | ○ | てんかん | ○ | ||||
皮膚の刺すような痛み | ○ | ストレス | ○ | ○ | |||
ほてり | ○ | 内 分 泌 系 |
甲状腺の異常 | ○ | |||
汗が多く出る | ○ | 乳汁分泌の不全 | ○ | ||||
手足の血管拡張 | ○ | 血液脳関門の異常 | ○ | ○ | |||
皮膚のしみ | ○ | メラトニンの低下 | ○ | ○ | |||
脱毛 | ○ | 血中ヒスタミンの低下 | ○ | ||||
生 殖 |
精巣の退行 | ○ | ○ | セロトニンの異常 | ○ | ||
女児出産率の増大 | ○ | ドーパミンの異常 | ○ | ||||
流産 | ○ | ○ | 免 疫 系 |
免疫力の低下 | ○ | ○ | |
不妊 | ○ | ガ ン ・ 腫 瘍 |
白血病 | ○ | ○ | ||
奇形児出産 | ○ | ○ | 皮膚ガン | ○ | |||
先天性尿道異常 | ○ | 脳腫瘍 | ○ | ○ | |||
月経パターンの変化 | ○ | リンパ腫瘍 | ○ | ○ | |||
卵子形成の減少 | ○ | ○ | 乳ガン | ○ | ○ | ||
精子の減少 | ○ | ○ | 精巣ガン | ○ | ○ | ||
精力の衰え | ○ | ○ | 肺ガン | ○ | |||
循 環 系 |
心臓の不快感 | ○ | ○ | 聴神経腫瘍 | ○ | ||
動悸 | ○ | ○ | すい臓ガン | ○ | |||
息切れ | ○ | ○ | その他のガン、腫瘍 | ○ | ○ | ||
不整脈 | ○ | ○ | そ の 他 |
アルツハイマー病 | ○ | ○ | |
徐脈 | ○ | ○ | 痴呆症 | ○ | ○ | ||
血圧の変化 | ○ | ○ | そううつ症 | ○ | |||
心電図の異常 | ○ | ○ | アトピー・アレルギー | ○ | |||
心臓発作 | ○ | ダウン症 | ○ | ||||
心筋梗塞 | ○ | 自殺 | ○ | ||||
動脈硬化 | ○ | 死亡率の増大 | ○ | ○ | |||
貧血 | ○ | ALS(筋萎縮性異常硬化症) | ○ | ||||
子どもの突然死 | ○ | ○ |
出典:「危ない電磁波から身を守る本」
なお、これまでの日本の電磁波に対する対応の遅れは、世界的に見ると、大いに問題視されてしかるべきと考えられます。
このような中、現状では下記指摘のとおり、『個人的な防御』が必要なのです。
このように、日常生活環境に溢れている、家電からの電磁波や情報伝達用機器からの電磁波の影響は旧来の熱作用とは別の視点から研究する必要のあることは、世界の常識になっている。
現在までに膨大な極低周波および低周波の電磁波健康障害が報告されている。
極低周波(50、60Hz)はWHOの発ガン性分類ではDDT(過去に殺虫剤として使用された有機塩素化合物)や鉛と同じクラス2Bに分類されている。DDTは禁止され、家庭生活環境からは鉛が排除されてきているが、電磁波の禁止は難しいのか行われていない。個人的な防御が必要となってきている。
「シックハウス症候群を防ぐには」25頁 吉野博・石川哲編著
電磁波と不動産の関連
電磁波は、発生源から広範囲に影響を及ぼすため、影響範囲内にある不動産に居住している限りは電磁波の影響を慢性的に受けることになります。
不動産の購入において特に注意すべきなのが、携帯電話の中継基地局からの高周波電磁波や、送電線や変電所からの超(極)低周波電磁波です。
なお、基地局は、電磁波を「放射」しているため、基地局から1km離れても電磁波があまり減退しないという特徴がある一方で、送電線や変電所は、電磁波を放射するのではなく、「漏洩」することにより周囲に影響を及ぼすため、発生源から離れるほど電磁波が減衰するという特徴があります。
なお、漏洩型の電磁波発生源は比較的存在を認識しやすいのですが、放射型の電磁波発生源は、すぐ近くにない場合はその存在を認識しにくいという面がある点に注意が必要です。
電磁波の発生源にはこのほかにも様々なものがあります。それゆえ、家の近くに変電所がないからといって安易に安心することのないように、まずは電磁波の存在を確認することが重要なのです。
不動産エコ診断の診断内容
電磁波の人体への影響は、前述のとおり被曝量×被曝時間で決まるため、被曝時間の長さだけの問題ではありません。つまり、たとえ被曝時間が短かったとしても、強烈な電磁波を曝露するようなことは避けるべきなのです。
このような考え方に基づき、不動産エコ診断では、室内各所における低周波及び高周波電磁波について、その発生の有無及び程度を計測し、安全性を確認します。
水質
水道水は本当に安全なのか?
『日本の水はおいしい』これは今は昔の話のようです。一般家庭におけるミネラルウォーターの普及がそれを証明しています。今や水は店で買う商品なのです。この裏には、『水道水は飲めたもんじゃない』という一般市民の本音があるのではないでしょうか。
最近のトピックとしては、某県の水道水から寄生虫が検出された騒動などもありました。このような現状を鑑みたとき、「一度は水道水を疑う」ことも必要ではないでしょうか。
つまり、無防備に受け入れるのではなく、まずは現状を確認してから、必要に応じて対策を検討すべきなのだと思います。
なぜなら、その水で赤ちゃんにあげるミルクをつくるのだから。
その水で毎日お米を研ぐのだから。
水道水と問題発生原因
水道水に関連する問題発生原因には、①配水される水の水質そのものに問題があるケース、②水道管に問題があるケース、③管理に問題があるケースなどがあります。
①水質そのものに問題があるケース
水道水は、厚生労働省が水質基準を定め、これに基づいて配水されているため、本来的には安全な水になっています。
ところが、水道水は浄水場で浄化されてから各家庭に配水されるのですが、その過程で、寄生虫などの汚染物質が混入してしまうケースがまれに見られます。最近では、2013年2月におきたジアルジア検出騒動がありました。
しかし、このようなケースはレアケースであると考えられます。
②水道管に問題があるケース
水質自体に問題がなかったとしても安心してはいけません。なぜなら、水道管に問題がある場合があるからです。
水道管は、以前は鋳鉄管・石綿セメント管・鉛管などが使用されていたのですが、実はこれらは経年劣化による水質への影響(錆・アスベストの溶出・鉛の溶出等)が懸念されているのです。
さらに、水道管と錆の関係については、下記のような指摘もあることに注意を要します。
鋼管や鋳鉄管に錆が発生するメカニズムは、もともとの管の材質のほか、水道水の水質や水圧、水温、消毒用に添加した塩素、管が埋設されている周辺の土壌中の水分や腐食成分、土壌中を流れる電流などが物理的・科学的に作用するために複雑である。しかし、水道水中に酸素が溶け込み、消毒用の塩素も添加されていて、管内面と水道水が接触する以上、錆の発生はどうしても避けられない面がある。(「管があぶない」14頁 玉真 俊彦著 ぎょうせい)
なお、水道管については、建物が新築であったとしても、建物に引き込まれるまでの本管が古い場合があるので、『新築物件だから安心』とはならない点に注意が必要です。
③管理に問題があるケース
水質や水道管に問題がなかったとしても、管理に問題がある場合があります。これはマンションに当てはまります。
マンションの場合には、水道供給方式が一戸建住宅と異なります。一戸建住宅は、水道本管から直接分岐しているのに対して、マンションではいったん受水槽に貯めてから、各戸に供給されます。つまり、受水槽が汚れていると、元の水がきれいでもたちまち汚染水になってしまうのです。
マンションの場合、受水槽の清掃は『1年以内ごとに最低1回』行わなければなりません(水道法施行規則第55条)。表現を変えれば、1年に1回しか清掃しなくてもいいのです。
もし、清掃が1年に1回だとして、もし、清掃直後に偶発的に汚染物質が混入したとしたら・・・。1年の間に受水槽がどのような状態になるのかを想像すると恐ろしくなります。そして、これは決してたとえ話ではありません。現実に起こっていることなのです。
不動産エコ診断の診断内容
不動産エコ診断では、不動産という側面から、水道管の劣化と関係している下記事項について計測し、数値から推定される不動産の良否を診断します。
①濁度
濁度とは、水に浮遊する微小粒子を濁りの程度で表したものです。水道水の濁りは、配管の錆や土砂、化学物質の混入等により発生します。濁りの原因は様々あますが、基本的には水質的に何らかの異常が発生していることを知らせる現象であり、危険信号です。
したがって、水道水の濁度を測定することにより、水道管の劣化を推定するとともに、水道水に異常がないか確認するのです。
②色度
色度とは、着色の度合いを数値で表したものです。蛇口を開けた際に、赤色、白色、青色、黒色などの着色水が出る場合があります。これらは、それぞれ下記原因が考えられます。
赤色:鉄管の錆が溶出
白色:亜鉛メッキ鋼管による亜鉛の溶出
青色:銅管による銅イオンの溶出
黒色:水源に起因するマンガンの混入
いずれにしても、水質的に何らかの異常が発生したことを知らせる現象であり、危険信号です。したがって、水道水の色度を測定することにより、水道管の劣化を推定するとともに、水道水に異常がないか確認するのです。
③pH値
水は種々の塩類・遊離炭酸などを様々な割合で含んでおり、その割合によって中性・酸性・アルカリ性を呈します。日本の水道水のpH値は基本的には安定していますが、プランクトンの発生や工場排水・汚染物質の混入等によりpH値が変化します。
また、pH値が酸性になると、水道管に錆が発生しやすくなる一方、アルカリ性になると、塩素消毒の効果への影響が出てきます。
したがって、水道水のpH値を測定することにより、水道管の劣化を推定するとともに、水道水に現在異常がないか、また、将来的に異常を招かないかを判定します。
騒音
騒音とは
騒音とは、人が騒がしくて不快と感じる音をいいます。
この騒音の発生源には、隣人の生活音のほか、車の通行や飛行機の上空通過など様々なものがあります。いずれの場合でも、一般的に大音量は騒音として認識され、様々なトラブルの原因になります。そして、悲しいことに現実では、騒音被害者が泣き寝入りをしたり、引っ越しすることになるケースが多いそうです。
通常、日常生活を送る上で音がない「無音」状態というのはありません。人は音の中で生活をしているのです。
したがって、家の購入に際しては、現状が『どの程度のレベル』の音なのかを把握することが大切なのです。
音量 | 騒音のレベル |
130db | ジェット機の離陸 |
120db | リベット打ち・杭打ち |
110db | 自動車の警笛 |
100db | 電車のガード下 |
90db | 地下鉄の車内・怒鳴り声 |
80db | 交通量の多い道路・騒がしい事務所 |
70db | 大声での会話 |
60db | テレビ・ラジオの音・普通の会話 |
50db | 静かな事務所 |
40db | 畳のすり足 |
30db | 夜の郊外住宅地 |
20db | 木の葉のそよぎ・ささやき声 |
資料:誰にもわかる「騒音防止ガイドブック」
騒音と健康被害
騒音被害者は精神的ストレスを受け、下記の症状を発症するといわれています。
・心理的不快感(イライラ)
・頭痛
・睡眠妨害
・難聴
・集中力の低下
・認知力の低下
・体力の消耗
・精神障害など
・視力低下
・記憶低下
など
不動産エコ診断の診断内容
不動産エコ診断では、現在が『どの程度のレベル』の音なのかを把握するという視点から、建物の中における音量及び建物の外における音量を計測し、当該環境の良否を診断します。
なお、建物には『遮音等級』という考え方があります。これは遮音性能を表したものですが、遮音等級のみでは、「その結果」がわかりません。そこでエコ診断では、性能表示よりも現状確認という観点から、現況の音量を確認することにしているのです。
結露
結露とは
結露とは、主としてガラスなどの表面や壁体内で、空気中の水蒸気が凝縮して水となって表れる現象です。ガラスなどの表面に発生するものを「表面結露」、壁体内で発生するものを「内部結露」といいます。
なお、一般的に結露といえば、表面結露を指しています。
結露は冬に発生することが多いのですが、夏に地下室などで発生する「夏型結露」もあるので注意が必要です。
結露と健康被害
結露はカビを誘発し、カビ胞子による健康被害を引き起こすのみならず、カビはダニの餌となり、ダニの死骸や糞による健康被害をもたらします。
このように結露は、近年増加傾向にある喘息、じんましん、鼻炎、アトピー性皮膚炎等を発症する一因となると考えられています。
さらに、結露の水滴は建物の木造部分を腐らせ、金物部分を錆びさせます。つまり、結露は人のみならず建物にも悪影響を及ぼすのです。
不動産エコ診断の診断内容
結露は建物の構造のほか、居住者のライフスタイルに起因するなど、発生原因は様々です。不動産エコ診断では、建物の構造及び部屋の位置に着目して、建物内で結露が発生しやすい箇所を結露計を用いて、機械計測に基づき診断します。これにより、どの場所を特に注意すべきか、その部屋をどのように使うべきかの参考にしてください。